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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第11章 《巻の壱―予期せぬ災難―》
そっと振ると、耳許でしゃらしゃらと涼やかな音が響く。素材は黄楊、上部には数個の桜の花が群れ咲いている様子をかたどっており、下方に玉がついている。地味ではあるけれど、なかなか愛らしい簪だ。
嫁ぐ前は〝槙野のお転婆姫〟などとありがた迷惑なあだ名で呼ばれていた泉水、屋敷の奥で座っているよりは庭で木刀を振り回したり、樹に登っている方が性に合っている。よく男装しては町に出て、市井で暮らす人々や賑わう店店を覗いていたものだ。
嫁ぐ前は〝槙野のお転婆姫〟などとありがた迷惑なあだ名で呼ばれていた泉水、屋敷の奥で座っているよりは庭で木刀を振り回したり、樹に登っている方が性に合っている。よく男装しては町に出て、市井で暮らす人々や賑わう店店を覗いていたものだ。