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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第11章 《巻の壱―予期せぬ災難―》

泉水は両手で顔を覆った。必死で思い出そうとしてみるけれど、何も浮かんでこない。
自分が事故に遭ったときのことだけは憶えているのに、その前後―これまでのこと、どこで何をしていたのか、何という名なのか、家族はどこに住んでいるのかといった諸々のことを何も憶えていないのだ。
「名前、名前―」
うわ言のように呟き、懸命に記憶の糸を手繰り寄せようと試みるが、まるで五日前のあの瞬間にプツンと断ち切られたかのように記憶がつながらない。
自分が事故に遭ったときのことだけは憶えているのに、その前後―これまでのこと、どこで何をしていたのか、何という名なのか、家族はどこに住んでいるのかといった諸々のことを何も憶えていないのだ。
「名前、名前―」
うわ言のように呟き、懸命に記憶の糸を手繰り寄せようと試みるが、まるで五日前のあの瞬間にプツンと断ち切られたかのように記憶がつながらない。

