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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第12章 《巻の弐―待ち人―》
それが、誠吉が十二のときのことだった。以来、誠吉は掏摸やかっ払いをきっぱりと止め、地味な仕事に真面目に打ち込むことにした。やはり生涯かけての仕事にしたいと考えたのは、父親と同じ飾り職人であった。
父の手になる見事なかんざしを、幼い誠吉は息を呑んで見つめたものだった。誠吉は近くの佐八という親方の許を訪ね、通いで弟子にしてくれるように頼んだ。通常、子飼いでいっぱしの職人に仕込んで貰うのは住み込みが条件であったが、おさよのことを思えば、到底家を離れることはできない。
父の手になる見事なかんざしを、幼い誠吉は息を呑んで見つめたものだった。誠吉は近くの佐八という親方の許を訪ね、通いで弟子にしてくれるように頼んだ。通常、子飼いでいっぱしの職人に仕込んで貰うのは住み込みが条件であったが、おさよのことを思えば、到底家を離れることはできない。