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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第13章 《巻の参―驟雨―》

と、ふいに耳の中にキーンという金属質な音が響いた。あの頭痛が起きる前兆の耳鳴りだ。泉水は両手で耳を覆い、その場にくずおれた。しゃがみ込んだ姿勢のまま、頭を抱え込み膝に顔を伏せる。
耐え難いほどの痛みが押し寄せた。
その痛みの中で、泉水は確かに見ていた。
ひと月前、この眼前の小さな橋を渡り、向こう岸へと歩いてゆく自分の姿を。
淡紅色の小袖に浅黄色の袴を身につけた凛々しい若衆姿の娘が橋を渡る。娘はあまたの人々が行き交う大通りを揚々と歩いている。
耐え難いほどの痛みが押し寄せた。
その痛みの中で、泉水は確かに見ていた。
ひと月前、この眼前の小さな橋を渡り、向こう岸へと歩いてゆく自分の姿を。
淡紅色の小袖に浅黄色の袴を身につけた凛々しい若衆姿の娘が橋を渡る。娘はあまたの人々が行き交う大通りを揚々と歩いている。

