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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第15章 《巻の壱―幻―》
《巻の壱―幻―》

 泉水はふと空を振り仰いだ。両手を頭の後ろで組んだ恰好で、涯(はて)なく蒼い空を見上げ、うーんと声を出して思いきり伸びをする。その拍子に鼻の奥がむずがゆくなり、クシュンと小さなくしゃみを洩らした。その姿は誰がどう見ても、到底、五千石の大身旗本の奥方にはふさわしくない。乳母の時橋が見れば、また、引っくり返らんばかりになって怒りまくるに相違ない。
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