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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第15章 《巻の壱―幻―》
泉水は八歳の砌に御家人堀田久永の次男祐次郎と婚約したが、祐次郎はその三年後の冬、十四歳で早世した。以来、泉水は〝物の怪憑き〟と人々から怖れられ、泉水と縁組した男は物の怪憑きの姫に取り殺されるという心ない噂が囁かれるようになった。
そのため、公方さまのおん憶えもめでたい時の権力者を父に持ちながら、泉水を嫁に迎えたがる―、あるいは槇野家に婿入りしようとする勇気ある若者は誰一人としておらぬ有り様であった。