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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第15章 《巻の壱―幻―》
突如として耳を打った妖しい笑い声に、泉水はビクリとした。弾かれたように顔を上げると、随明寺の山門から伸びた長い石段を、ゆっくりと一人の僧侶が降りてくるところであった。何がおかしいのか、墨染めの衣を身にまとったうら若い僧は、くすくすと低い声で笑っている。
だが、泉水が固まったのは、その笑い声のせいではなかった。目深に被った菅笠をおもむろに外した僧の顔は―、あろうことか亡き許婚者堀田祐次郎に酷似していたのだ!