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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第15章 《巻の壱―幻―》
と、くっくっと喉の奥で低く笑う声が続いた。
「何をそのように警戒なさる必要があるのでしょう。私はご覧のとおり、ただの行きずりの僧侶にございます。私如き何の力も持たない僧に、榊原五千石のご内室さまが何を怖れることがあるというのでしょうか?」
泉水は愕然として、若い僧の整った顔を見つめた。この男は泉水が何者なのかを、榊原泰雅の妻であることを知っている。では、泉水の身許を知った上で、その前に立ち現れたのか。