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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第16章 《巻の弐―花―》
「―お方さま、お方さま」
 背後からそっと呼びかけられ、泉水はゆっくりと振り向く。そこには気遣わしげな乳母の顔があった。
「何か、お悩み事でもおありでございますか?」
 時橋が案ずるのも無理はない。
 桜の咲き始めたばかりの随明寺で、あの妖しい僧と出逢ってから、数日が経っていた。あの日以来、泉水はどこか心ここにあらずといった体で、何を話しかけてみても上の空だ。
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