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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第16章 《巻の弐―花―》
実際、脇坂はまず何よりも榊原の家名を重んじてきた。この男にとって最も重要なのは、連綿と受け継がれてきた名門榊原氏の家そのものであり、恐らくは当主―主君である泰雅さえ、二の次ではないのか。優雅な立ち居ふるまいで部屋に入ってきた脇坂は泉水よりはるかに下座に座り、手をついた。
「奥方さまにはご機嫌麗しく、恐悦至極に存じ上げまする」
型どおりの挨拶を言上する倉之助に、泉水は笑った。
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