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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第16章 《巻の弐―花―》
当主の身に万が一のことあらば、その家は即刻断絶、お取り潰しになり、結果、多くの家臣たちは禄を失い、路頭に迷うことになる。脇坂倉之助の言い分は、もっともといえた。
「お方さま、そのような悠長なことを―」
顔色を変える時橋に、泉水は微笑む。
「私の気持ちを思いやってくれるそなたの心遣いは嬉しい。しかしながら、脇坂の申すごとく、お世継の誕生を一日千秋の想いで待ち侘びる者たちの気持ちもまた、判らぬでもない」