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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第17章 《巻の参―幻(げん)花(か)―》
一瞬、泉水は、あのひとときの夢が現のことであったのかと錯覚しそうになったほどであった。ただ一つ違うのは、夢の中のその人が白の着流し姿であったのに対し、泉水にのしかかる男は、周囲を取り巻く一面の闇を身に纏ったような黒の僧衣を着ていることだ。
「私と一緒に来て下さい」
般若が耳許で囁いた。人を幻惑するこの深い声といい、墨染めの衣といい、この面をつけているのが徳円であることは疑いようもない。