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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第17章 《巻の参―幻(げん)花(か)―》
 徳円が立ち上がり、須彌壇の上の燭台に火を入れた。淡い光がぼんやりと室内を照らし出す。紅色の二本の蝋燭は、御仏を照らす灯(ともしび)としては不似合いなほど鮮やかな色をしている。その凶々しいほどに鮮烈な紅色を見ている中に、泉水の脳裡に、つややかな紅椿が浮かび上がった。七年前の昔、許婚者と並んで眺めたきれいな椿の色。
 ひんやりとした床の上に、徳円が被っていた般若の面が転がっている。部屋に灯された蝋燭の灯りに照らされ、面は微妙な陰影で表情を作る。
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