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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第17章 《巻の参―幻(げん)花(か)―》
徳円の静かな声が雨音に溶けてゆく。
「お帰りなさい、あなたを待つ人の許へ。もう過去の亡霊があなたの前に現れることは二度とないでしょう。私が十まで数える間に、ここからいなくなって下さい。さもなければ、いつ、私の気が変わるともしれませんよ、良いですか、一、二、三―」
徳円が小さく呟き、数を唱え始める。
泉水は涙の滲んだ眼で徳円を見た。
静まり返った表情からは、何の感情も窺えない。
「四、五、六―」