この作品は18歳未満閲覧禁止です
蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第19章 《其の壱―嵐―》
平和に慣れきった人々は、どこかで刺激を求めている。幕府は表面的にはまだまだ安定を保ち、将軍の威光は衰えてはいないが、その礎は確実に揺らぎ始めつつあった。この国は土台から少しずつ蝕まれてゆきつつある。少しでも良識ある、幕政に携わる者は、そのことに気付いていた。
そんな中、幕府の頂点に立つ将軍が後嗣のおらぬまま倒れたのだ。
「嵐が来るやもしれぬな」
「嵐、でございますか」
泉水と時橋は互いに顔を見合わせた。