この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第19章 《其の壱―嵐―》

泉水の父槙野源太夫宗俊は公方さまのお憶えもめでたく、時の勘定奉行という要職についている。泉水は一年余り前、泰雅に嫁いできた。最初の頃はすれ違いの多かった二人だが、今は夫婦として心通い合わせ、泉水は幸せな日々を過ごしている。かつて女狂いと囁かれた泰雅は、稀代の遊び人として知られていた。女から女へと渡り歩き、江戸市中を徘徊しては女を口説き回っていた。その容姿の端麗さと無類の女好きとをかけて〝今光源氏〟なぞと陰で呼ばれていたのだ。

