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蝶は愛されて夢を見る~私の最愛へ~
第3章 《巻の弐―運命の悪戯―》
春の陽が翳り、西の空の端が茜色に染まる頃、男は名残惜しげに立ち上がった。
「また必ずここで逢おう」
男は泉水を眩しげに見つめて言った。
太陽が地平の向こうに沈み、薄い夕闇が足許に這い寄ろうとする時分になっていた。男は幾度も泉水の方を振り返りながら、道の向こうに消えてゆく。やがて、その上背のある後ろ姿は角を曲がり見えなくなる。
名前さえ知らない、美しい男。
また、逢えるのだろうか。次は、いつ逢えるのだろうか。