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第17章 第四話【花笑み】　《其の参》

　あの言葉は、他ならぬ永瀬自身の心情の吐露ではなかったろうか。そして、実のところ、永瀬の抱く想いを大奥の女中たちの誰もが抱いているのではないか。
　そんな日々であってみれば、矢代がふと出逢った歌舞伎役者に心奪われ、燃えるような恋に身を委ねたのも判るような気がするのだった。
　この日、美空は初めて、大奥という特殊な世界に生きる女の現実―悲哀をまざまざと知った。