この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第18章 第四話【花笑み】 《其の四》
〝徳川実記〟には、第八代将軍家俊夫人、御台所について、このように記されている。
孝徳院さまを常に陰から支えた、貞女、賢婦である。常に出すぎることなく良人に寄り添い、大奥をよく束ね、あまたの奥女中たちから慕われた。
また、その美貌も天下に知られ、その姿はたおやかな一輪の花のごとし、と。
孝徳院さまは生涯、側室を一人も持たず、御台所一人を守った。
江戸の市井に生まれ、職人の娘として育ちしも関白近衛房道卿の猶子となり、尾張藩ご簾中から、御台所となる。九代実徳院さま、ご生母として尊崇を受けた。
孝徳院さまより先立つこと六年、九代さまに将軍職を譲り、西ノ丸で大御所、大御台所として隠居生活を送る最中にご逝去。
行年五十六、名は芳子、蓮容院と諡する。
(完)