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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第4章 《其の参》
 美空は緩慢な動作で立ち上がった。洗濯物を小脇に抱え、長屋までゆっくりと歩く。
 ふいに遠くから、かすかに鶯の鳴き声が響く。この界隈には町家ばかりしかないはずで、立派な庭付きのお屋敷なぞはとんと見当たらぬが、近くに梅の樹でもあっただろうか。
 そんなことをちらりと考え、路地裏のどぶ板を踏みならし、家の腰高障子に手をかける。
 そのときだった。唐突に目眩(めまい)を憶え、美空は咄嗟に戸を掴もうとした。しかし、わずかに間に合わず、その手は空しく宙をすべる。
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