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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第5章 《其の四》
自分には、やはりこの男しかいないのだと思い知らされた瞬間であった。
腕の中で泣きじゃくる美空の背をトントンと叩く孝太郎の仕草は、あたかも幼子をあやすようだ。美空の背を叩いてやりながら、孝太郎は笑みを含んだ声で語って聞かせた。
「たいした怪我ではない。左腕を少し打っただけで済んだ。泣くほどのものじゃないさ」
孝太郎の話によれば、一刻ほど前、町人町の目抜き通りを歩いていた時、往来の向こうから荷車を引いた馬が暴走してきたという。