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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第2章 《其の壱》
あのときのことを、美空はいまだに鮮明に記憶している。いつもは無骨な父が耳朶まで赤くなりながら、後添えを迎えようと思うのだが、どう思うかと訊いてきたのである。
相手は、父が常連になっている縄暖簾の女将おれんであった。当時、二十七、八の小股の切れ上がった妖艶な美貌の女だった。おれんなら、美空も満更知らぬ仲ではない。いかにも男好きのする類の色気のある女ではあるが、気性はさっぱりとした江戸前の女で面倒見が良いことも知られていた。