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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第2章 《其の壱》
皮肉なことに、その〝浪速屋〟の主人誠志郎と父を死に追いやった若旦那の父〝美濃屋〟喜平は従兄弟同士であり、誠志郎と若旦那の藤次郎も知らない仲ではない。残念ながら、父が事件に巻き込まれた夜、誠志郎は縄暖簾には顔を見せていなかった。
もし誠志郎があの場に居合わせれば、間違いなく二人を止めに入っていただろう。一介の職人と江戸でも指折りの大店の旦那でありながら、二人の間には周囲からも窺い知れぬ友情が介在していたようであった。