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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第8章 【烏瓜~からすうり~】 《其の弐》
その頃、既に兄高晴は亡くなっていた。孝俊と父孝信の間には一つの約束があった。それは、孝信自身に何かあった時、即ち病に倒れたり逝去した場合は、すみやかに戻り、家督と藩主の地位を継ぐことである。
だが、頼りにしていた世継高晴を失ってからの孝信は、精神的にかなり追いつめられていた。ゆえに、孝俊との約定を信じ切れず、弟―俊実に息子俊昭を万が一の場合には尾張徳川家の跡取りに欲しいと頼み込んでいたのだ。