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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第12章 【細氷~さいひょう~】《其の壱》 
「美しき蒼い空、か」
 孝俊は紫陽花から視線を空に移し、呟いた。
 六月の江戸の空は、絵の具で塗りつぶしたかのように涯(はて)なく蒼い。湖を思わせるその澄んだ青空の向こうに、真綿をちぎったような白いちぎれ雲が浮かんでいた。
「そなたは、まさしく父御の願うたとおりの娘に育ったというわけだな」
 孝俊は降り注ぐ六月の陽光に眼を細めた。
 日中ははや、真夏を思わせるほどの陽気で、室内は涼しいが、一歩庭に出れば、かなり強い陽差しが容赦なく照りつけてくる。
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