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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第12章 【細氷~さいひょう~】《其の壱》 
 しかし、幸福感に包まれているはずなのに、何故か、胸騒ぎがしてならない。
―いつまでも変わらずにいてくれ、美空。そなたの父御の願うたように、永久(とこしえ)にあの空のように俺を見守っていてくれぬか。
 先刻の良人の言葉と、最近の彼の横顔に落ちる翳りは何か関係があるのだろうか。
 美空は孝俊の胸に頬を押し当てながら、かすかな予感に身をおののかせていた。
 六月の空は、美空の不安なぞ素知らぬ様子で、澄み切った蒼を滲ませ、江戸の町を包み込んでいる。
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