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激愛~彼の瞳に射貫かれて~
第14章 第三話 【細氷~さいひょう~】《其の参》
ある時、孝俊がふと洩らした言葉を、智島は忘れられなかった。孝俊は女主人が不在の部屋を度々訪れ、ここでこの本を読みふけっていた。
美空のいないこの部屋で、美空の面影を想いながら、二人を結びつけたこの歌を繰り返し読み返していたのだ。
―この歌は、俺と美空の想い出の歌だ。俺が美空に最初に教えたのが、この歌なのだ。
それは、孝俊が智島に向けてというよりは、自分自身に言い聞かせているような一人言であった。