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せめて夢の中だけでも
第14章 不思議な男

店の外に出ると

螺旋階段の下に座っている秋雨がいた。




「秋雨。」



後ろのから声をかけると
秋雨はユックリと振り返った。


怒っているのかと思っていたけれど
彼は優しく微笑んだ。



「凛ちゃん…こっち、おいで。」



秋雨は自分が座っている階段の一つ上を
手で叩き私を呼んだ。

素直にその指定された場所に座る。


10月の深夜は肌寒く
時々身震いをする程だった。


少し上から見る彼の後ろ姿…


彼は私を見上げるように見つめて微笑む。






愛おしい…




そんな思いがこみ上げる。





「凛ちゃん…」


私の頬に触った秋雨の手は
冷たくなっていた。




その手に私の手を重ねると
やっぱり秋雨は微笑む。



私の中の秋雨は笑顔しかない。




「凛ちゃん…キスして?」




優しく、優しく放たれる言葉。



胸の奥が苦しくて…

ギューっと締め付けられた。
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