この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
せめて夢の中だけでも
第14章 不思議な男
店の外に出ると
螺旋階段の下に座っている秋雨がいた。
「秋雨。」
後ろのから声をかけると
秋雨はユックリと振り返った。
怒っているのかと思っていたけれど
彼は優しく微笑んだ。
「凛ちゃん…こっち、おいで。」
秋雨は自分が座っている階段の一つ上を
手で叩き私を呼んだ。
素直にその指定された場所に座る。
10月の深夜は肌寒く
時々身震いをする程だった。
少し上から見る彼の後ろ姿…
彼は私を見上げるように見つめて微笑む。
愛おしい…
そんな思いがこみ上げる。
「凛ちゃん…」
私の頬に触った秋雨の手は
冷たくなっていた。
その手に私の手を重ねると
やっぱり秋雨は微笑む。
私の中の秋雨は笑顔しかない。
「凛ちゃん…キスして?」
優しく、優しく放たれる言葉。
胸の奥が苦しくて…
ギューっと締め付けられた。