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せめて夢の中だけでも
第21章 晴れのち雨

「…どうしたの?凛ちゃん。
元気ないけど?」
「えっ…あっ。何でもないよ」
「嘘。わかるよ。」
カウンター越しに秋雨は、顔をぐっと近付ける。
今日はイベントでもないけれど
秋雨はカウンターにいる。
まだOpen前のお店に秋雨と2人。
特別ねと言って私が独り占めできる時間を
いつも作ってくれる。
「…何でもないよ」
「………そう。」
赤と黄色の二層に別れたカクテルを
私へと差し出してくれる。
「あのねっ…」
そう言いかけた時、
携帯電話が鳴った。
「あっ…」
「どうしたの?出ないの?」
戸惑いながらもカバンから携帯電話を取り出す。
『晴』
鳴っていた音を消して私は
再び携帯電話をカバンにしまった。
「凛ちゃん?」
「いいの。何でもないから」
私が笑うと、秋雨も同じように笑った。

