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せめて夢の中だけでも
第21章 晴れのち雨
螺旋階段を降りた所で
私は不幸にも声をかけられた。
…嫌な予感しかしなかった。
「凛…」
「晴…」
「偶然だな。」
晴はまだスーツ姿で今仕事が終わったと笑っていた。
彼の視線は螺旋階段の上の扉へと向けられる。
「何?こんな所で1人で飲んでたわけ?
通りで電話も出ないよな。」
至って普通に彼は笑っていた。
「飲み直すか?」
「えっ。ちょっと!やだ!」
晴は私の腕を引っ張り
また螺旋階段を登っていく。
…やだ。やだ。
こんな姿、秋雨に見せられない。
「いらっしゃい…」
俯く私には誰が出迎えてくれたのか解らない。
声からすると…仁さんだ。
「奥にどうぞ…」
「開いてるならカウンターにして。」
…えっ。カウンター!?
「晴っ。カウンターは…」
「どうぞ。開いてますよ。」
秋雨の低い声だった。