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せめて夢の中だけでも
第30章 コピーで構わない
「ただいま。凛ちゃん」
私は思わず煌に抱きついた。
驚いた煌は、少し後ろによろめいたけれど
柔らかい笑顔を向けて私の髪を撫でてくれた。
「寒いから…中に入ろう」
私の手を引いて煌は中へと入る。
煌は私より先に、座ると
満面の笑顔を向けて
「おいで」と両手を広げた。
断る理由も…拒む理由もなく
私はまた彼の腕に包まれる。
煌の前に座る私には煌の表情は見えない。
「凛ちゃん…好きだよ」
煌が言う甘い言葉。
後ろから呟かれる言葉は…
秋雨の変わりをしようとしてる証拠。
私が煌の腕に手をそっとのせると
彼の腕に力が入った。
「凛ちゃん…俺…
秋兄のコピーでいいよ…
面影を重ねても構わない…
秋兄に抱かれてると思ってもいい。
でも…この腕の中から…逃げないで…」
「煌…くん」
「俺は凛ちゃんが好きなんだ…」
「あなたは秋雨じゃないよ…。」
そう…あなたは秋雨じゃない。
似ている仕草も…笑顔も…
今じゃ秋雨に見えなくなっていた。
それはきっと…煌君に惹かれ始めていたから。