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せめて夢の中だけでも
第31章 溢れる心と溢れた優しさ
…………………………
二人と別れ私は1人で家に帰る。
机の上に自分のキーケースを投げると
不意に秋雨のマンションの鍵が顔を覗かせた。
「……………」
本人不在の今、この鍵は返すことも
使うこともない。
そして、その横に置かれた携帯電話が
不在着信のお知らせをしていた。
…いつの間に鳴ったんだろ…
コートのポケットに入れていたから
気付かなかった…
画面を見て…体が震えた。
【秋雨】
そう出ている不在着信。
日付も…時間も
さっきだと告げている。
震える手で電話をかけ直す。
その声は…すぐに私の耳に届いた。
「凛ちゃん…」
聞きたくて…聞きたくて…
仕方ながなかったこの声。
煌とは違う…優しさ。
涙を流すのに時間はかからなかった。