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せめて夢の中だけでも
第38章 知らないあなたも私は知りたい。
いつもの様に、オープン前の
お店のカウンターに座って秋雨と過ごす。
今日は薄いピンクのカクテルが置かれ
カランっと氷が音を鳴らす。
中には真っ赤なサクランボが浮かんでいた。
秋雨もウイスキーを飲みながら
ご機嫌良く私の髪や頬にこれでもかというくらい触れてくる。
こんな上機嫌な秋雨も珍しい。
「凛ちゃん。今日は店が開いてもここにいて。」
私の髪をクルクルと巻き取りながら彼は言う。
「別にいいけど?」
「ここにね、今日は花子が来るから」
「花子?」
「凛ちゃん知らないんだっけ?
山田花子。」
…芸人さんの山田花子?
それなら知ってるけど…
「山田…花子?芸人の?」
「違う。まぁ…あだ名だけどね」
すると横に仁さんがスッと座ってきた。
「こら。秋雨。いつまでも花子って言ってやんな。
凛ちゃん、山田花子じゃないからね。
山田 壱っていう名前のバイトの子だよ。
歳は確か…まだ19だったか?」
「そんなもんじゃなかった?」
興味がないのかあるのか秋雨は
適当に返事を返した。