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せめて夢の中だけでも
第38章 知らないあなたも私は知りたい。
その帰り道だった。
隼人と駅前まで一緒に歩く。

隼人の話では…この駅前で秋雨を見たらしい。

この駅は…私が初めて秋雨と出会った駅。
私は覚えてないのだけれど…。


ふと、まだ明るい駅の構内へと目をやると
そこには偶然と言っていいものか、秋雨の姿があった。

その横には黒髪の女性。



「あれだよ。」


女性の顔は見えないが、私はゆっくりと駅へも近付いた。心臓の音がうるさいくらいに鳴り響く。
それでも、足を一歩…また一歩前へも出す。



そして、その見覚えのある背中に声をかけた。


「秋雨…」


その背中はゆっくりと振り返った。
一瞬、驚いた顔をしていたけれど…すぐに笑顔になった。

「凛ちゃん、こんな時間に何してたの」

後ろの隼人へと目線を向け、一段と目を細め笑った。

「あぁ。そういう事…」


少し素っ気なく感じるのは…こんなシチュエーションだからだろうか。



「…誰?その人。」

ん?もその女性に目を向け、その人に対して笑った。
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