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せめて夢の中だけでも
第38章 知らないあなたも私は知りたい。
「じゃぁ、行ってくるね。」
そう言うと、律儀に玄関までお見送りをしてくれた。
なんか…ペットみたい。
「はいっ!」
渡されたのは弁当。
「えっ!?」
「食べてください。毒は入れてないから。」
ニコッと笑うと本当に可愛い。
黒髪が首をかしげるとサラッと揺れる。
「ありがとう」と受け取ると、彼もまた笑う。
職場に着くと向かい側の隼人が私の方へと向き直す。
「おい。あのホモ野郎出て行ったかよ?」
「まだ。」
少し苦笑いすると、隼人は溜息をついた。
「変な奴だな。……弁当?珍しい。」
「花子ちゃんが。」
そう言うと隼人は呆れたように小さく笑った。
「お前よりよっぽど女だな。
取られないようにしろよ。」
そう言うと自分のデスクへと戻って行った。
秋雨が冷たく引き離せないのは…
健気だから…?
弁当箱を見つめながらそんな事を考えていた。