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第5章 静止の手。

さっきまで笑っていた秋雨の顔からは
笑顔は消えていた…。




冷たい目に私の背筋はゾクッと凍りついた。





「ハハッ。同僚？


俺の女みたいな言い方してるくせに？」




「意味わかんねぇんだけど。

で、その手どけてくれない？」



「ヤダね。あんたが守るべき女は後ろだろ」




その言葉に…隼人はハッとして
私の腕から力を弱めた。




「行こう。」



秋雨は私の手首を掴んだまま
外へと向かった。



1人状況が掴めない沙織ちゃんは
オロオロと困った顔をしていた。





まだ隼人に掴まれた腕が
ジンジンと痛かった。




あれは確かに…
私を引き止めてくれた手だった…



隼人がそんな事をしてくれるなんて
信じられなかった…





ドンドン進んでいく秋雨の背中を見ながら
そんな事を思っていた。