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せめて夢の中だけでも
第6章 現実か空想か
店の外の螺旋階段を降りると
やっと秋雨は私を離した。
とても興奮していたのか
肩でハァ、ハァと息をしている。
「あのっ…五十嵐さん」
堪らず声をかけると彼は
優しい表情に戻っていた。
「秋雨だよ。凛ちゃん」
あっ…。凛…ちゃん
さっきまで呼び捨てだったのに
また、普段通りの呼び名で私を呼ぶ。
「秋雨…さん。」
「よく出来ました。」
彼はニッコリと笑って私の頭に
温かい手のひらをのせた。
「ゴメンね。引っ張り出したりして…
みんな驚いたかもね…。」
はい。でしょうね…
この後どうしてくれるんですか?
なんて言えませんけど…
「あっ。俺まだ仕事中だった。
また仁(じん)さんに怒られるわ…」
舌打ちをしながら頭をクシャッと乱した。
「会えてよかった。凛ちゃん。」
と手を振りながら店内へ戻ってしまった。