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やさしいキスをして?
第20章 スペシャルサンクス
『何で嫌なんだよ、訳を言えって!』
『だぁーかーらッ何であたしがゆうひと付き合わなくちゃいけないのかって、こっちが聞いてんでしょ?』
岩本家で夕飯をご馳走になった直後、ゆうひの部屋までの階段を一気に駆け上がる。
『ウチの両親もあさひんトコも、そーすりゃいーじゃんって言ってんだから、じゃあそうするか?って言っただけじゃん!何が不満だ!』
後から入ってきたゆうひが扉を閉める。…先の夕飯にて、何故か話題にあがったあたし達の交際のススメ。何気なく断ると、一家で寄ってたかって責めてきた。
『もぉ〜そんな話どーでもいいからさ、早くこれ決着つけようよ!』
ビシッと指差したのは、やりかけだったオセロ。黒のあたしが優勢だから、きっちり勝利を収めて帰るつもりだ。
『……おれが勝ったら、付き合ってくれんのかよ。』
『は?』
『賭けろよ。そうじゃなきゃ今日はもう相手してやんねー。帰れ、でべそ。』
はぁああぁあ?!!でべそ違うわ!!ニャロ〜やってやろーじゃん!この状態であんたに勝ち目はないんだからねェー!
***
『イッエーイ!おれの勝ちー♡』
『…さいてー。こんなんで無理やり付き合えだなんて、あんた卑怯よ。』
何か知んないけど、逆転された。おかしい。オセロはいっつも、あたしが勝つのに…何で急に強くなんの?
『…別に無理になんて言わねーよ。じゃあ、一個だけお願いきいてくれるか?』
承諾すると『イエスかノーで答えてくれ。』ゆうひはオセロをどけて、真正面に座り直した。
『あんな、おれあさひのこと好き。すげぇ好き。絶対大事な思い出にするから、あさひの初チュー、今おれにちょうだい?』
あまりに予期せぬ言動は、人の思考を止めるらしい。
『答えて…イエス?ノー?』
言いながらも、ゆうひはぎゅっと抱きしめてくる。そ、そんな…急に好きって…
『………やっぱだめかな?』
観念したように離れたゆうひの顔は、超真っ赤。こっちまで移るくらいに…もう、バカ…
間も無く…
ちゅっと音を立てた二つの唇は
『もう…付き合ってもないのに、チューしちゃったじゃん//////』
『うん…責任とって彼氏になるよ//////』
あははと笑ってもう一度、やさしく惹き合う…それは中1の終わり。春先の出来事なのでした。
〈おしまい〉