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旦那様☆ロマンチスト
第8章 覚悟を決めた奥様
薄く化粧を施して、ルージュを引く。
身支度をしながら。今までの敏さんとの暮らしを思い出していた。不思議なことに楽しいことだけが心に浮かんでは消えていく。
もしかして、これが最後になるかも知れない―――そんな予感に胸が締め付けられそうになる。
もう、泣かないって決めたんだから。涙が零れそうになる自分にそう言い聞かせ、私は泣くのを我慢した。
―――朝ごはん・・・作ってあげられなかったから、晩ごはんは敏さんの好物にしよう。
もしかして。もしかしてだけれど、手料理を振舞うのは今日で最後になってしまうかもしれないんだもの。
そんな不吉な想いを胸に、敏さんの好物で晩御飯の仕度をした。温かいのを食べて欲しいから、途中まで、だけれど。
メニューは、敏さんのお母様から教えて貰った親子丼だ。
結婚した当時はお料理が殆ど出来なくて。敏さんのお母さんに凄くお世話になったっけ。