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恋のリサーチ
第3章 小さな恋の芽

「ええ、なんだか気が急いて。
それにいつも同じっていうのをたまには破ってみたくて」
いつもいつも、同じに過ごしていれば
特に間違いなんかないだろう。
楽しくもなけりゃ危険もない。
無難に過ごしていればそれでいい。
だから時間もいつもを守ってきたけど、
ほんの5分早く聖夜に会ったって、
その後困ることはないし・・そう、
いつもを変えたくて早く来たんだ。
変えたくて・・
「ほぉ、オレに会うのが待ち遠しかったってか?
1日あいちまったもんな」
聖夜の前の椅子に腰かけると、
彼は片肘に体重をあずけるようにして
身を乗り出してきた。
また・・毛穴が見えるくらい近い・・
「そんなんじゃありませんよ~」
私にしては珍しく、男を鼻であしらうようなセリフをはいた。
こんなことめったにしない。
その後も何事もなかったように
コーヒーに砂糖とミルクを入れてスプーンでかき混ぜる。
ふ~ん、という気の抜けた聖夜の声を聞きながら。
「こんないいオトコになびかないなんて、
やっぱリサーチのやりがいがあるかもな」
聖夜と目を合わせると彼は
フイッと視線を逸らした。
拗ねた男の表情も
久しぶりに見た。
「ま、いいや。そのうちあんたも
オレの魅力に気がつくだろうからさ」
これくらいポジティブでなければ
ホストなんてやってらんないだろう。
私のように、いちいちクヨクヨと考えるような人間の
する仕事じゃない、と思うんですけど・・
「そうなるといいですね」
負けじと減らず口をたたくと、
おぉいいね、そう言いながら親指を立てた。

