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顧みすれば~真の愛~
第41章 山下紗英になること
部屋に案内され少しホッと息をつく。

数えきれないほどの山下家の部屋数。

子供の頃、かくれんぼをして根岸さんに怒られたっけ。


リビングへ入るとのテーブルの上には山のように披露宴や衣装のパンフレットが積まれていた。

お義母さまは私の手を引き

「直哉と紗英ちゃんの披露宴の準備を進めているの。
ほとんどは決まったんだけど、お料理や衣装、引き出物は紗英ちゃんの意見を聞かなきゃと思って紗英ちゃんが帰ってくるの待ってたのよ」

お義母さまはウキウキと話始める。

「なにも、すぐに始めなくても。

 紗英ちゃんは長旅で疲れてるんだ。

 少し休ませてあげなさい」


お義父さまはあきれている。

「だめよ!時間がないの。すぐに始めないと間に合わなくなるわ」


お義母さまは聞く耳を持っていないようだ。

「紗英ちゃん、招待客のリストを出してね。

 明日は衣装を見に行きましょう。

 いくつか見てきたんだけどどれも素敵なの。

 私が着たくなっちゃったわ」

パンフレットのあちこちに付箋が貼られている。私たちの披露宴をとても楽しみにしてくれていたんだ。

「娘の結婚式って楽しいのね。

 総一郎の時はさすがにあれこれ口出せなかったからもう楽しくて仕方がないの」


お義母さまは鼻唄混じりにパンフレットを広げる。


お義父さまがため息をつく。

「紗英ちゃんごめんな。

 サントリーニから帰国してすぐに始めたんだよ。

 本人たちの話を聞けっていっても聞かなくてな」


「いいえ。こんなにお義母さまに喜んで頂けるなんて私の方こそ嬉しいです

 山下家の披露宴なんて私たちだけではとても手に負えないですから」


「そうか。ならいいんだが」

嬉しそうにパンフレットを開くお義母さまをお義父さまは優しく見つめていた。

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