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笑うことしか出来ない私へ
第6章 好き
腕を絡めながらもう一度こうたの名前を呼ぶ。

「何?」

今度はちゃんと反応してくれた。

「私、虐待されて育ったの。」
声が震える。
「母と、母の彼氏に。」

こうたは何も答えない。

「母も、母の彼氏も34歳で
私は14歳だったんだけど」

こわい…

「私が14歳の時に
母の彼氏に犯されて…

それから2年間それが続いた。」

「母は昔から私を邪魔者にしてて
私の言うことは信じないし
殴る蹴るは当たり前だったから…

もちろん母に言ったりはしなかった。

母は自分のことと男のことで
一生懸命だったから

私はついこの間まで食事の仕方も知らなくて

みっともないし醜かった、自分が。」

「20歳で水商売を始めて
そこで初めて叩き直されたの。

それまでみっともない姿だったのかって
思い出す度に恥ずかしくて…


体だって汚くて…
自分に自信なんかなくて…」

「…もう喋るな…」
こうたが初めて口を開く。それでも私は止まらない。

「16で家を出てから
誰ともセックスしてない。
だから、この間こうたにキスされた時は
ビックリした…。

正直、こわいって思っちゃったの。

でも、私こうたのこと好きなんだ。」

そこまで言い切ると
急に泣けて来た。

言っちゃった…。

こうたの方を見るのが怖い。

嫌われたんじゃないか…
こんな話。
自分のもっとも見せたくなかった
隠そうとしていた本当の姿を晒して。

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