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片想いの行方 2
第17章 幸せの花びら
2人の姿が見えなくなると、蓮はあたしから手を離した。
「……ヒカル、顔」
「え!?」
腕にその熱さがまだ残っていて、思わず後ずさり。
ダラダラと汗が噴き出るあたしを、蓮はじっと見つめる。
「そんな真っ赤な目して、こんな時間に1人になるなよ。
ヒメが来たから良かったけど、誰かに襲われたらどーするの」
「…………っ」
「危機感無いところ、いいかげん直せよな」
その微笑みも、その声も、何もかもが優しくて
蓮の瞳を見続けることが出来ず、あたしはパッと目を逸らした。
………こんな時間って言ったって、都内のど真ん中。
色気の無いアラサー女を襲う奴、どこにもいないってば。
………蓮の言葉は、いちいち心を刺激する。
どれだけ人をブチのめせば気が済むんだよ……
「ヒカル、腹減ってない?」
「へ!?」
蓮がまた唐突に話を吹っ掛けるもんだから、変な声が出てしまう。
返事をする前に、蓮は座席に置いたままのあたしのバッグを手に取った。
その目が、隣りの席に置かれたビールとハンカチを見つける。
「……はは、あいつ優しいな」
蓮は笑いながらそう呟くと、その2つをあたしの手に渡した。
……あんたもそうでしょ……
心の中でツッコみながら、受け取ったヒメの優しさを握りしめる。
「それは今後、弱みを握る時の切り札として使えるから、大事にとっておきな」
「……蓮……」
「終電までまだ時間あるだろ。
メシ食いにいこうぜ」