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例えば、こんな...
第6章 バレンタイン企画
「わぁあっ!」
交互の足で地面を蹴りながら、しがみ付いてくる。でもその顔は笑ってて、早く連れて帰りたくて始めた筈が、俺まで楽しくなってきた。
真純が小さくて軽いからこそ出来る曲芸。
軽く小走りまでスピードを上げ、笑い転げる真純を抱えてあっという間に駅に着いた。仕上げに右手も腰に当て、両手で身体を高く掲げて一回転。
「ひゃあ!」
驚いた様に俺を見下ろし、また笑いだす。
「はい、到着」
ついでにもう一回転して、そっと真純を駅前に下ろした。
「斎藤さん、凄いですね。楽しかったです」
満面の笑みで見上げてくる。
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
笑顔で応えて、真純の右手を取った。指を絡めて改札を抜ける。二人並んでホームに立った。
さっきまですぐにでも真純をどうこうシたいと思っていたのが、走ったお陰でスッとんだ。余程楽しかったのか、真純はニコニコ俺を見上げていて、機嫌が良い。
その笑顔を見下ろして、来店した時に持っていた紙袋がない事に気が付いた。

今さら。どんだけ盛ってたんだか……

そしてふと思う。

一体何人に渡したんだ?
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