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暁闇
第7章 記憶の中の雨
食事は、とても美味しくて。
会話も弾んだ。
互いの仕事のこと、そして、丈のこと。
彼のことを口にするときのあおいさんに、本当に弟のことを大事に思っているんだな、と感じる。
そのあと、初めて会ったあの日のバーへと場所を移した。
カウンターに座り、そのときかけた迷惑を思い出し、バーテンダーに謝罪とお礼を口にする。
彼は、何でもないといったような態度で笑顔を見せ、彼女に向かって、いつものですか? と尋ねた。
頷く彼女を見ると、
「あれから何度か来たの、ここ」
そう、答えて。
「……そうなんだ」
ひとりで? と思わず聞きそうになり、少し戸惑う。
あおいさんが誰と来ようが俺は別に――――そう自分に言い聞かせながら、オーダーをした。
「今日は気をつけます」
そう呟くと、あおいさんが笑った。
俺もつられて、少しだけ。