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暁闇
第7章 記憶の中の雨
チリン……と、雨の音に混じりながらベルの音が聞こえた。
振り向くと、後ろから自転車が迫ってきていて。
俺は咄嗟に、彼女の腕を掴んで引き、場所を入れ替えた。
そして通り過ぎる自転車。
俺の足に、水がかかる。
あおいさんが濡れなくて良かった、そう思った。
「すいません。自転車来たから」
突然の動作を謝ると、あおいさんは俯いたまま首を降った。
「濡れませんでした?」
「うん、ありがとう――――」
ちらりと、上目遣いで俺を見ながら、そう言ってくれて。
「よかった」
ほっとした俺は、再び歩き出す。
あおいさんももちろん、そうして。
静かに降り続く雨。
右側に感じるあおいさんの存在。
他愛のない会話をしながら、今日は歩きでよかったかも、なんて俺は思ったりしていた。
――やっぱり、雨は嫌いじゃない。