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暁闇
第10章 上書きされていく
「思うのはさ、ある程度はしょうがないって思うわけ。
私だって、前の彼女どんな人だったのかなーって気になるときある。
でも、それを口に出すのはどうかなって思うから、そういうのわざわざ聞いたりなんかしないし。
もちろん、こっちだって前の彼氏と無意識に比べてしまうとこがあったとしても、言動には出さないように気をつけてるし」
「へえ……」
「え? なに?」
「お前、意外とちゃんと考えてんだな」
「は? なにそれ」
失礼だなー、と言いながら、甘くない俺のコーヒーを飲む。
やっぱりこっちの方がおいしい、と呟くと、俺を見て。
「村上からは、私って彼氏ころころ変えてる女に見えてるかもしれないけど、毎回ちゃんと本気で相手に向き合ってるんだからね!」
「分かってるよ、そんなの」
付き合い、長いんだから――――。
そして俺は坂本のコーヒーに恐る恐る口をつける。
「うわ」
俺には甘すぎるそれに、思わず声が漏れた。
坂本はそんな俺を、にやにやしながら頬杖をついて見ている。