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暁闇
第10章 上書きされていく
「前の彼氏のことなんて別にどうでもいいと思わない?
そんなの聞いて何楽しいんだろ。わけわかんない」
思い出したら苛々してきたのか、坂本はコーヒーに角砂糖をふたつも入れるとスプーンでぐるぐるかき混ぜ始める。
溜め息をついてスプーンを置き、そのコーヒーを一口。
「……甘っ!」
そしてソーサーにカップを戻すと、そのまま俺の方に押しつけてきて。
代わりに俺のコーヒーを引き寄せた。
「おい」
思わず苦笑いしながらつっこむと、坂本はちらりと俺に視線を投げて寄越す。
「……村上もそういうの気になるタイプ?」
「え?」
「だから! 彼女の前の男の存在!」
「あ――……」
どうかな、と呟く。
「まあ気にならないって言ったら嘘になるかもな。
でもそれを口や態度に出すか出さないかで全然違うと思うけど」
「そうなの!」
坂本が食いついてくる。