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暁闇
第14章 弟
……何も言い返せない。
私を責める、弟の言葉。
彼の姿が視界からなくなった今、思わず涙がこみ上げそうになった。
私はそれを大きく息を吐いて逃して。
ほとんど減っていないコーヒーを流しへと運んで。
時間をかけてカップを洗いながら、考えていた。
……あの子の言葉はきっと正しい、と。
待ってもらいたいなら。
もっとちゃんと言うべきだった。
どうしてすぐ返事ができないのか。
突然の告白……ううん。
……手を握られたとき、もしかして、と思った。
だから突然ではなかったかもしれないけど。
でも、私は本当に動揺してしまって。
街の雰囲気のせいにして翔悟くんに逃げてほしいと、そんなふうにも思ってしまった。
ストレートにぶつけられる想い。
今までの私は、すぐにそれを断っていた。
……でも。翔悟くんにはそんなことできなかった。
どうして?
そんなの、分かってる。
翔悟くんに気持ちがあったからだって、それぐらいちゃんと分かってる。
でも、すぐに受け入れることもできなくて。
……どうして?
だって、そんなの。
……そんなの――――……。