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暁闇
第14章 弟
そして。
「まあいいけどさ」
立ち上がって、冷蔵庫へと向かう。
炭酸水を取り出してそれを一気に飲む。
はあ……と。
ペットボトルから口を離し、キャップを締めながら。
「だって姉ちゃんの問題だしね――――」
そう言って、無理矢理作ったような笑みを口元に浮かべ、そのまま私を見る。
「姉ちゃんの好きにすればいいよ」
やっぱり、目元は笑っていなかった。
「でもそんな曖昧な理由で待たされるなんて……オレ、マジ翔悟さんに同情するわ」
「丈――――」
ペットボトルを手にそのまま部屋へと歩いていこうとする弟の背中を見つめる。
丈は、部屋のドアを開け。
そのまま振り向いて言った。
「……一応言っとくけど。
待たせてる間も相手の気持ちは変わらないなんて思わない方がいいと思うよ?」
そして、バタン……と閉められたドア。
「丈――――……」
私のその呟きは、無機質なドアに阻まれて。
そのまま虚しく自分へと跳ね返ってきた。